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パニック障害を区別する

 まず、「パニック障害」と「パニック発作」を区別しなければならない。簡単に言って、突発的で強烈な動悸・息苦しさなどがあるのに内科や救急部を受診しても異常が見つからないのがパニック発作である。だが、パニック発作は嘘や仮病ではない。不安などから自律神経を介して本当に動悸・息苦しさなどが起こり、心拍数・呼吸数・血圧が上昇する。パニック発作は「症状」であり「精神症状」である。それに対して、パニック障害はパニック発作を反復的に生じるような神経系の持続的・反復的な機能的障害を含む「精神障害」「心の病気」である。
 また、パニック発作と身体の障害による身体症状とを区別しなければならない。もちろん、不整脈などでも動悸などが起こり、喘息などでも息苦しさなどが起こる。一般の方々は、パニック発作の動悸・息苦しさなどを身体の障害による身体症状と自己診断し、内科を受診したり救急車を呼ぶことが多い。だが、その逆の身体の障害による身体症状をパニック発作と自己診断するほうが恐ろしく、場合によっては命に係る。だから、一般の方々がパニック発作を起こして内科を受診したり救急車を呼ぶのは正解である。突発的で強烈な動悸・息苦しさなどがあるのに内科や救急部を受診しても異常がなかったとき、それがパニック発作だったことが分かる。
 さらに、パニック発作を起こしたからといって必ずしもパニック障害ではない。パニック発作は、パニック障害に限らず、ありとあらゆる精神障害や精神障害と言えない状態でも起こりえる。だから、パニック発作を起こしたからといってすぐにパニック障害と自己診断しないほうがよい。パニック障害にはパニック発作を反復的に生じるようなそれに固有の神経系の持続的・反復的な機能的障害がある。
 さらに、ICD-10やDSM-W-TRなどの診断基準に当てはまる「パニック障害」もいくつかのグループに分かれる。そもそも、それらの診断基準は「操作的(マニュアル的)」診断基準であって、目に見える客観的な状態によって精神障害を分類し、神経系の機能的障害や心理学的ストレス・葛藤などの目に見えないものは無視される。そのような操作的診断基準の意義はあるのだが、いくつかの精神障害について異なる精神障害または状態が混同される。パニック障害もその例である。
 それらの診断基準に当てはまるいわゆる「パニック障害」の中には以下の特徴をもつものがある。

(1)SSRI(セロトニン選択性再吸収阻害薬)が有効である。
(2)経過中に本物のうつ病(大うつ病性障害・反復性うつ病性障害)のうつ状態(うつ病エピソード)に酷似する状態または本物の強迫性障害の強迫症状に酷似する状態を来たす。

ところで、SSRIは本物のうつ病・本物の強迫性障害にも有効である。
 もうお分かりだろうか。それらの特徴をもつパニック障害には、パニック発作を反復的に生じるようなそれに固有の神経系の持続的・反復的な機能的障害があり、その機能的障害は本物のうつ病や本物の強迫性障害と類似する。そのようなパニック障害と他のパニック障害とは区別される必要がある。何故なら、治療法が異なるからである。SSRIが、前者には有効であり、後者には無効である。
 だが、それでは前者と後者を区別するのにSSRIを試してみないといけないことになる。だが、前者と後者はSSRIを試さなくても以下のように区別することができる。

(3)パニック発作の頻発について、内的〜外的ストレスが前者では小さく後者では大きい。
(4)パニック発作が起こる状況について、前者では閉所などのパニック発作が起きたときに逃れることができない状況に限られるのに対して、後者では限られない。例えば、開放的な場所での他人からの叱責や暴言によってパニック発作を起こす可能性は、前者では小さく後者では大きい。

 さて、それらのことはうつ病・強迫性障害にも当てはまる。うつ病については同様の解説がいくつかあるので、強迫性障害について説明する。いわゆる強迫性障害にもSSRIが有効なものと無効なものとがある。経過中に本物のうつ病のうつ状態と酷似する状態または前者のパニック障害のパニック発作と酷似する状態を来たすものとそうでないものがある。前者と後者は以下のようにして区別することができる。

(3)強迫症状の頻発について、内的〜外的ストレスが前者では小さく後者では大きい。
(4)何度も確認することについて、前者が戸締り・忘れ物・落し物など日常的であるのに対して、後者では他人を傷つけていないか・自分が傷ついていないかなど哲学的・文学的である。

 さてでは、パニック障害・強迫性障害について後者はどうすればよいのだろうか。『自我をもつ動物の心理学』で述べられているような直面と停止が必要である。参照していただきたい。それは翻訳されていてネットで検索すれば出てきて無料で読める。

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