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経済の実態に即した生活を追求する
-正社員と非正社員の二階級の時代-



 企業や役所に一生勤め、年収一千万前後を得、ボーナスも退職金もあり、3LDKのマンションや郊外の一軒家に住み、子供一人につき部屋一つを与え、塾に通わせピアノを習わせ、車をもち、週末にはゴルフに行く…。そんな時代は終わった。もっとも、日本経済に限らず、今に限らず、経済の実態はそんなものではない。経済の実態がそんなものだと思っていたのは、はかない繁栄があった地域の大人と大人を見て育った子供たちだけである。それらの人々は経済の実態に即さない生活を求める。
 19世紀以来、ブルジョアジーとプロレタリアートの二階級が代表的だった。プロレタリアートが諸権利を獲得し、プロレタリアートの一部が終身雇用・年功序列賃金を獲得しスペシャリストなどが出現すると、プロレタリアートの中で、

(A)終身雇用・年功序列賃金を維持できる正社員・公務員または転職または独立して待遇を維持・拡大できるスペシャリストなど、

(B)アルバイト・パート・日雇い、形だけ正社員・公務員で実質的に終身雇用・年功序列賃金でない正社員・公務員や派遣社員など、

に分かれる。前者(A)を「正社員グループ」「正社員」と呼び、後者(B)を「非正社員グループ」「非正社員」と呼ぶことにする。正社員グループは、公務員を含み、転職または独立して待遇を維持・拡大できるスペシャリストなどを含む。非正社員グループは、アルバイト・パート・日雇いなどだけでなく、形だけ正社員・公務員で実質的に終身雇用・年功序列賃金でない正社員・公務員や派遣社員などを含む。
 終身雇用または実質的な終身雇用が始まった時点で非正社員グループは存在した。だが、正社員グループが権利を主張できるのに対して非正社員グループは権利を主張できず、正社員グループがプロレタリアートの代表となる。経済がはかないながらも繁栄すると、正社員グループの収入が増大するという意味で両者の収入の格差が拡大する。経済のはかない繁栄が終わり、正社員グループが解雇され減少し非正社員グループが増大しても、残る正社員グループが従来の収入を維持し、非正社員グループの収入は減少する。非正社員グループが増大しその収入が減少するという意味で両者の収入の格差が拡大する。例えば、正社員グループが年収八百万円前後であるのに対して、非正社員グループは時給千円以下で年収、二百万円以下であり、仮に、肉体労働をして日給一万円としても、年収三百万円前後であり、格差は三倍〜五倍になる。かくして、非正社員グループの存在が顕在化することによって、両者の区別が明らかになる。ブルジョアジーとプロレタリアートの二階級の時代ではなく、正社員と非正社員の二階級の時代である。
 まず、重要なのは正社員グループと非正社員グループの格差を縮小することである。そのためには消費税の廃止と累進課税の再強化が必要である。消費税増税どころではない。また、政治家は、経済の繁栄・復興・活性化などのきれいごとを主張するより、経済の実態を率直に認め、正社員グループと非正社員グループの格差を埋めることを優先させるべきである。また、不要な公務員を削減し正社員グループの人員を少しでも減らすべきである。一般企業が正社員を減らさざるをえないように公務員も減らすべきである。不要な公務員はどこにでもいる。ただし、公務員も正社員グループと非正社員グループ、つまり、実質的に終身雇用・年功序列賃金でないグループに分かれる。非正社員グループの公務員の収入が削減されることはあってはならない。人員と収入を削減するべきなのは正社員グループの公務員である。
 だが、それらによっても縮小されない格差は残る。また、正社員グループはますます減少し、非正社員グループに編入される。そこでは、増大する非正社員グループは経済の実態に即した生活を追求するしかない。だが、経済の実態に即した生活を追求することによって得るものがある。
 もはや、3LDKのマンションや一軒家やベッドや子供部屋や塾やピアノや車やゴルフセットはない。そこには、四畳半や六畳や布団があるだけである。それが経済の実態である。だが、そこには夫婦・親子の会話があり文字どおりの触れ合いがある。四畳半や六畳で四人なら触れ合わざるをえない。子供がいじめられたと言えば親は話を聞かざるをえない。分数が分からないと言えば親は思い出し間違いながら教えざるをえない。娘が生理が来たと言えば父親もコンビニに買いに走らざるをえない。せめて日曜ぐらいは鈍行を乗り継いで日帰り旅行に出かけ家で作ってきた弁当を食べる。だが、ウォシュレット付き水洗トイレにする・シャワーを付ける・毎食後に歯を磨く・明るいところで読書や勉強をする・一年に一回は市民健診を受けるなどのポイントは抑えておいたほうがよい。非正社員グループでもそれぐらいのことはできる。というより、非正社員グループだからこそできるものがある。例えば、子供が身近にいるから明るいところで読書や勉強をするよう注意できる。逆に親は子供から注意される。
 もちろん、仕事は日雇い・アルバイト・パートなどしかない。そこには様々な人生があり、出会いがある。上司の悪口や職場の話を抜きにして仲間と人生を語り合える。ときには飲みながら。酒・煙草・薬物に耽溺する恐れはある。だが、たくさんの酒やタバコや薬物を買うカネがないのである。
 正社員グループは言うだろう。正社員グループは努力した。勉強した。難しい試験に合格した。高卒または大卒後に大企業または役所に入った。入社前または入社後に難しい資格を取った。高度な人間関係のストレスに耐えた。上司の干渉にも耐えた。自分たちはそれだけの収入を得、それだけの生活をするのに値すると。確かにそのような違いもある。だが、以下のような違いもある。
 正社員グループやカネ・名誉・地位・権力を追求する人々にとっては人間関係の多くが道具になる。非正社員グループや孤立したり阻害される人々にとっては人間関係の多くは道具ではなく目的になり欲求の対象になる。正社員グループは正社員グループなどを追求することによって人間関係の多くを道具にする。非正社員グループは正社員グループから駆逐され経済の実態に即した生活を追求することによって人間関係そのものを追求する。
 どちらが対人機能習性が発達するだろうか。当然、非正社員グループである。人間関係を道具にして対人機能するよりも、人間関係そのものを目的にする人間のほうが対人機能習性が発達することは明らかである。ただ、正社員グループは人間関係を道具にする習性が発達するだけである。それらのことは場末の酒場や食堂に入ってみれば分かる。
 これから結婚していく男たちへ。正社員グループに入る男を求めるような女は去らせるがよい。どうせ、離婚してなけなしのカネを失うだけである。これから結婚していく女たちへ。カネも愛もあるにこしたことはない。だが、カネはあるが愛がないより、愛はあるがカネがないほうがマシである。それが分かったときにやり直せる人間は少ない。映画やテレビドラマはごく少ない人間を誇張したに過ぎない。子供たちへ。経済の実態に即した生活を追求することによって人間関係そのものを追求した親を再発見する日がいつか来るだろう。

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