COPYRIGHT(C) 2002 KOBE-SANNOMIYA.COM ALL RIGHTS RESERVED, Link Free! NPO法人わたしたちの生存ネットトップページ 

臨床心理士を含むカウンセラーを国家資格化する

 日本の現状では臨床心理士を含むカウンセラーは国家資格化されていない。臨床心理士の資格でさえも臨床心理士資格認定協会という民間団体が認定する資格であり国家資格ではない。何よりも、日本の現状ではカウンセラーは国民健康保険・社会保険などが効いて3割負担などになる医療、つまり、保険診療を行えない。だから、一般市民がカウンセリングを受けると1万円前後の費用がかかる。
 保険診療の前提になるのは国家資格である。カウンセラーが国家資格化されれば、一般市民が保険診療としてカウンセリングを受ける可能性がたいへん大きくなる。保険診療としてカウンセリングを受けることの一般市民に対する利益は大きく、損失は少ない。具体的にはカウンセリングを受けるのに初回は3割負担で、3000円程度、二回目以降は2000円程度になる。
 では、何故、今までカウンセラーが国家資格化されなかったのだろうか。精神科医が反対してきたからである。精神科医はカウンセラーの国家資格化によってカウンセラーに職域を侵されると思ってきたのである。具体的には病院や診療所の売り上げが減り精神科医の収入が減ると思ってきたのである。また、精神科医の名誉や社会的地位が下がると思ってきたのである。かく言う筆者も精神科医であり、そのような精神科医たちの心情や診療所協会・病院協会の内情は知っている。それとともに筆者は臨床心理士でもあり、精神科医との付き合いより臨床心理士との付き合いのほうが多く、臨床心理士の国家資格化して欲しいという切なる願いも知っている。
 だが、一概に精神科医は不利益を被るだけではない。精神科診療所・病院において、従来、精神科医が行ってきた精神療法の一部をカウンセラーに任せてもよいのではないか。そのほうが受診する患者さんは増え診療所・病院の売り上げは増える。簡単に言って、一般市民は精神科医の診療よりカウンセラーによるカウンセリングを求めている。また、簡単に言って、精神科医の仕事が楽になる。
 だが、カウンセラーが国家資格化されれば、保険診療を行えるカウンセリングルームの開設が相次ぎユーザーが殺到し、国民の医療費は増大し、国民が支払う税金が跳ね上がる恐れがある。
 そこで、以下を提言する。

カウンセラーは医師が管理する医療機関の中だけで保険診療としてカウンセリングを行うことができる。と法で規定し実行する。

そうすれば、税金の跳ね上がりを防ぎつつ、カウンセリングが必要な一般市民が保険診療としてカウンセリングを受けることができる。
 だが、以下の問題が残る。カウンセラーはカウンセリング(精神療法)だけでなく薬を処方(薬物療法)できるようにするべきか。それについては一般市民・精神科医・カウンセラーの間で議論が必要である。カウンセラーは向精神薬(睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬・抗精神病薬・気分安定化薬など)に限って薬を処方できるようにするのがよい、と筆者は考える。
 また、カウンセラーと精神科医との間の葛藤だけでなく、カウンセラーの中で臨床心理士と「非」臨床心理士との葛藤が既に生じている。筆者はカウンセラーの中で非臨床心理士との付き合いも多い。臨床心理士だけが国家資格化されることはやるせない、臨床心理士だけが国家資格化されるぐらいなら何も国家資格化されないほうがよいという彼or彼女らの思いは肌で感じている。そもそも、様々な民間の団体が認定するカウンセラーが乱立する。○○カウンセラーがあるかと思えば、○×心理士があり、×○セラピストがあり…切がない。それらのそれぞれが正当性を主張し、他を排除する。だが、それらの中にも実力と経験をもつ人々はいらっしゃる。
 非臨床心理士でも理論的バックボーンをもつとともに臨床経験の豊富なカウンセラーは国家資格化されるべきである。ただ、理論的バックボーンと臨床経験を試す「付加的」な国家試験は受けて合格していただかなければならないと思う。「付加的」な国家試験としては、新たにカウンセラーを目指す人々が受けるべき国家試験を量的には軽減し質的には軽減しないものが適切だと思う。
 カウンセラーの養成と国家試験全般について。まず、従来の臨床心理士資格認定協会で認定された臨床心理士は無条件で国家資格を与えられるべきであり、それ以外の従来のカウンセラーについては前述のとおり「付加的」な国家試験が必要、と考える。新たな養成については従来の臨床心理士と同程度の養成、つまり、4年制大学と2年制の修士課程、または、6年制の大学が必要、と考える。また、国家試験の内容・難易度については臨床心理士の資格認定試験と同程度の内容・難易度が必要、と考える。ただし、従来の臨床心理士は2年制の修士課程を修了した後に臨床経験を積み終了した年の秋に臨床心理士資格認定試験を受けその翌年の4月に資格が発効した。つまり、従来の臨床心理士は資格が発効するのに7年の歳月を要した。それは酷である。医師も6年で資格が発効する。そこで、4年制大学と2年制の修士課程、または、6年制の大学を卒業するその年度内に国家試験を受けその翌年度、つまり、その年の4月か5月には資格が発効するようにするべき、と考える。
 いずれにしても、以上について一般市民・精神科医・カウンセラー・臨床心理士・非臨床心理士の間で議論が必要である。

 さて、その数ヵ月後に政権担当者が変わり、情勢が少し変化すると、私は以下のようなメールを政権担当党のある議員に送っていた。

○○議員 ○○○○先生

 昨日は「○○○○会議」に参加し、先生の講演を拝聴いたしました。ありがとうございました。
私は、

神戸市中央区三宮町1-10-1神戸交通センタービル6階で
○○○○○○クリニック 管理者、精神保健指定医、臨床心理士
NPO法人わたしたちの生存ネット 理事長
NPO法人わたしたちの生存ネット附属カウンセリングルーム緑 室長

をいたしております。先生には臨床心理士等の国家資格化にご尽力頂き誠にありがとうございます。
 私は臨床心理士ですが、臨床心理士のみの国家資格化には疑問を感じております。非臨床心理士の中には平均的な臨床心理士以上の経験と実績をもつ人々がいます。そのような非臨床心理士を私は見て参りました。また、非臨床心理士の中には臨床心理士や一部の資格だけが国家資格化されるぐらいなら、何も国家資格化されないほうがよいとの思いをもつ人々がいます。しかも、そのような非臨床心理士の中には平均的な臨床心理士以上の経験と実績をもつ人々がいます。何卒、それらの人々の思いをお聞きいただくようお願い申し上げます。

 私としては臨床心理士と非臨床心理士の間で心が揺れている状態です。
 また、国民が求めているものは、臨床心理士等の国家資格化ではなく、心理カウンセリングに健康保険が効くようになり、安価で質の高いカウンセリングが受けられるようになることだと私は思います。ところが、心理カウンセリングに保険が効くようになると、医療費が増大する可能性があると思います。
 そこで、私は考えました。精神保健指定医が管理する精神科医療機関の中で、国家資格をもつ「心理師」が、医師から独立して、保険が効く心理カウンセリングを行う。また、心理師は経口の向精神薬を処方することができる。法令施行後6年の間は、臨床心理士・非臨床心理士のすべてが国家試験を受ける資格をもつ。ただし、国家試験の難易度は臨床心理士資格認定試験以上とする。国家試験を作成するのは従来の臨床心理士養成コースの教授たちとする。すると心理師が過多になることもないと思います。新たな心理師の養成は従来どおりの4年制大学+修士課程または6年制大学とする。ただし、それらを終了した三月には国家試験を受けられるようにする。
 それらは私の考えです。あくまでも、前述の「臨床心理士や一部の資格だけが国家資格化されるぐらいなら、何も国家資格化されないほうがよい」との経験と実績のある非臨床心理士の思いが重視されるべきと考えます。

    神戸から世界へ返す NPO法人わたしたちの生存ネット 理事長 ○○○○

著作権代行 NPO法人わたしたちの生存ネットトップページ COPYRIGHT(C) 2002 KOBE-SANNOMIYA.COM ALL RIGHTS RESERVED, Link Free!